Research

資源・エネルギーと地球環境の持続的調和

現代ほど人類が「地球環境」を意識した時代はありません. 経済活動の活発化により資源やエネルギーの安定確保と同時に,人類と地球との調和ある共存を目指した地球環境の保全が重要となっています.持続可能な国際社会を維持するためには,資源・エネルギー・環境の三者で構成される新たなフレームワークやパラダイムの創成が問われています. 資源やエネルギーを安定的に確保するには,効率的な調査・開発技術の開発に加えて,その過程で生じる環境への影響を回避・低減させる技術や考え方の導入が不可欠です. この問題の解決のためには,地球を構成する地圏システムを深く理解し,資源・エネルギーの開発における物質の移動現象や循環を正しく見積もるとともに,地球環境にどの程度の環境リスクが生じるのかを科学的に予測・評価しなければなりません

データ科学による環境情報の高度解析

環境情報をどのように見極めるか,「本質的な学術研究」はなされていません. 自然科学で取り扱う膨大な情報の大多数は,多数の軸をもつ高次元データで構成され,さまざまな不確実性,変動性および疎性(スパース)などの特徴があります. 物質を構成する元素組成,スペクトル,センシング,イメージングなどの高次元データには,膨大な質量の疎性に隠れて,重要な物理・化学的な法則性が内包されています. システムが有する法則性や規範のみを見いだすため,スパースモデリングやベイズ推論を用いたデータ駆動科学の方法論や手法を開発することが重要です. このようなデータ科学を基礎とした新学術の創出により,地球科学,環境科学,リスク科学などの分野に具体的な事例として適用可能とし,社会や学術に貢献していきます.

資源エネルギー・セキュリティの確保

環境と人との関わりに関する様々な研究成果をもとに,地球環境における物質循環に根ざした地圏システムの理解,人の健康と自然環境との関係,地圏環境における土壌や地下水の汚染問題,さらには有害化学物質の環境リスク評価や資源・エネルギー開発に伴う環境・安全問題に関する融合研究および学際的な環境教育を実施する. 研究活動では,相転換を伴う複雑な流動場および反応現象を定式化することにより,多相流体,多成分の貯留層数値解析モデルの開発を行う.

資源開発における貯留層解析等の工学技術

地熱資源開発における貯留層の評価・解析技術について,坑井内の探査・診断技術,貯留層内シミュレーション技術および産出挙動の評価技術について教育する.

大気中CO2除去技術

CO2排出削減は世界的な課題となっており,迅速かつ大幅なCO2削減技術の開発が求められている.CO2炭酸塩鉱物化・固定化技術やケイ酸塩型土壌改良材を用いた大気中CO2の除去,CO2を利用した貯留層開発手法について研究する.

環境リスク評価およびリスク管理技術

従来の有害化学物質による環境汚染問題に加えて,大震災に伴う津波堆積物,放射性物質,気候変動,地盤変動などの新たな環境問題を取り上げ,新学術領域としての環境リスク評価学の展開および合理的なリスク管理技術について教育する. 研究活動では,様々な環境汚染物質のモニタリングや調査・分析を通じて,環境リスクの同定,定量化をはかるとともに,リスク低減のための除染技術の開発,社会的要素を考慮に入れた環境汚染物質のリスク管理技術について研究する.

環境汚染調査および対策技術

土壌や地下水などの地圏環境の場と汚染の発生メカニズムを科学的に理解し,地質学と環境科学を統合した汚染評価学に基づいて環境汚染を修復・浄化するための技術の開発と社会への普及について教育する. 研究活動では,重金属類と揮発性有機化合物を対象にして,地圏環境における移動性や反応性に関する実験,観測を進めるとともに,物理,化学および生物学的な浄化・修復手法の開発および現場適用を実施する.

スパースモデリングの地球プロセスモデルの構築

地球科学分野で得られる高次元・大量の計測データの振る舞いは非常に複雑であり不確定性も大きい.したがって,高次元データから地学現象を真に理解するためには,現象を記述する本質的な説明変数を選択し,データに潜む比較的少数の物理化学支配プロセスや構造を抽出することが必要不可欠である.このため,スパースモデリングを地球科学分野に導入することで,高次元・大量の地球科学データに潜む本質的な物理化学プロセスや構造を抽出する普遍的な枠組みを構築する.具体的な研究対象として,地球科学が直面した喫緊の課題である津波堆積物を扱うと共に固体地球科学分野にも適用し,地球科学のデータ解析に革新を起こす.