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東北大学東北アジア研究センター程永超准教授の研究室をご訪問しました(2024年8月5日更新)

今回の「教員インタビュー」は、中国出身で、近世東アジア国際関係史が専門の程永超(テイ エイチョウ)准教授へのインタビューです。

Q1:国際関係史の研究の道に進んだきっかけはどのようなことでしたか?

程先生:私は山東大学日本語学部で4年間日本語を勉強し、3年生の時から日本文化、日本社会、日本文学など色々な分野に触れることができました。日本文化を教える先生はあまり多くいませんでしたが、私はたまたま山口大学で博士号を取得した直後の先生にご指導いただくことができました。 その先生の研究対象は新井白石(あらい はくせき)です。新井白石といえば、思想史の分野での研究対象としては一般的ですが、彼は朝鮮通信使にも関連しています。その後、推薦入学で同じ山東大学の修士課程に進みましたが、その時の指導教官も新井白石を研究されている先生でした。

程先生の研究室にあった掛け軸

これまで私の先輩たちは殆ど日本思想史を専門として選びました。その理由は、主要な史料が漢文で書かれており、中国人にとっては読みやすいからです。私も多くの日本思想史の書籍をいただいて読みましたが、あまり共感できませんでした。 一方で、対外関係史の本を読んだところ、とても面白いと思い、やはり自分が関係史に興味を持っていることがわかりました。 山東大学の先生方に加え、名古屋大学に留学した時に出会った指導教員の影響も大きかったです。その先生と出会わなければ、朝鮮半島に関する史料に触れる機会がなかったかもしれないと思います。

Q2:日本の大学院への留学を選んだ理由は何でしたか?

程先生:私は山東大学の修士課程を修了する直前、アメリカ留学の準備をしていました。アメリカの大学の結果を待っている間に、もう1冊の書籍を読み始めました。 それは『大君外交と武威: 近世日本の国際秩序と朝鮮観』(池内敏著・名古屋大学出版会・2006年)という本です。大量の史料を分析して精密な結論を導き出す、いわゆる実証研究という研究手法は非常に説得力があり、様々な視点から論じることも私にとって魅力的です。
そのため、池内先生のもとで勉強することに興味をもち、連絡を取りました。その後、オンライン面接を行い、合格して名古屋大学への留学を決めました。

『大君外交と武威: 近世日本の国際秩序と朝鮮観』(池内敏著・名古屋大学出版会・2006年)

そして、日本で留学を始めてから、近世対外関係史を研究し、2021年10月に博士論文を基にした本を出版しました。

『華夷変態の東アジア : 近世日本・朝鮮・中国三国関係史の研究』(程永超著・清文堂出版、2021年10月)
第13回(2024年度)三島海雲学術賞人文科学部門受賞
第12回(2022年度)地域研究コンソーシアム賞(JCAS賞)登竜賞受賞
江戸時代の日朝関係史研究を土台にして、同時代の日中・中朝関係を解明することで、近世日本・朝鮮・中国の三国関係史の構築を目指しています。

Q3:どういう思いを込めてこの教育活動を続けていますか?

程先生: 普通の学生は受験のために歴史を勉強していますが、歴史研究はそれと全く違います。
歴史学は広い視点でみれば科学の一つです。史料を読んで新しい事実を発見したり、新しい研究手法を使ったりして新しい歴史像を学生に示したいと思います。 特に、理系の学生にも歴史の面白さを伝えたいと考えています。

今は学部の授業を二つ担当しています。一つは、「学問論演習」で、これは理系の学生と多く交流ができるプレゼミのような授業です。
もう一つは歴史学の授業で、主に工学部の学生が受講しています。そのため、工学と関連する内容をピックアップしました。例えば、朝鮮半島の釜山には倭館という日本人の居留地がありましたが、工学系の研究者が史料を元にその復元作業を行い、当時の倭館がどのような建物だったのかを明らかにしました。

Q4:共同研究などについて、最初のきっかけは何ですか?

程先生:名古屋大学でYLC特任助教をしていた時、助教間の共同研究のための研究費がありました。東北大学の片平キャンパスで行われたシンポジウムで、 たまたま名大と東北大で天文学の研究をしている方に出会いましたので、一緒に共同研究をし始めました。その際、彼らから何か歴史学と連携できたら良いという話が出たので、「日本以外の史料、朝鮮半島の史料はまだ使われていないかもしれない」と自ら提案したところ、それがきっかけで一緒に共同研究をすることになりました。

研究で使われている史料(韓国国史編纂委員会所蔵)

Q5:今やっている共同研究は何ですか?

程先生:「占星術」にずっと興味をもっています。30年後の退職時のことを考えると、ロンドンの専門スクール(London School of Astrology)で1年間勉強したいくらいですね。また、『易経』にも興味を持っています。

Q6:将来に向けて何かを挑戦してみたいことがありますか?

程先生:天文学の共同研究以外にも、大阪大学の先生と「和漢書テキストデータベースに対する知的情報検索システムの研究開発」という共同研究を行なっています。今後は、この共同研究でしっかりと成果を出せるように努力したいと思います。


程先生、インタビューにご協力いただき、大変ありがとうございました!。

※東北アジア研究センター人社サロンの教員インタビュー。下記よりご覧ください。
http://www.cneas.tohoku.ac.jp/jinsya/interview/

<以前の研究室訪問>
劉靖准教授(教育学研究科)のインタビュー。下記よりご覧ください。
https://web.tohoku.ac.jp/urahss/diary/2023/diary2023-2.html#Dec22_2022