東北大学理学研究科安全衛生管理室

このサイトは,新型コロナウイルスまん延抑止のため,私たちが取り組んできた対策を広く共有する目的で緊急に立ち上げました.限られた時間で,Web作成に不慣れなスタッフが作成しているため読みにくい部分等があるかと思いますが,どうぞご理解ください.

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最新の科学的知見に基づいた 新型コロナウイルス対策

ツボをおさえた対策で感染予防:最新知見に基づいたポスターを作成しました.

理学研究科構成員向けポスター(2021年3月版)https://www.sci.tohoku.ac.jp/news/2021/03/covid19_poster.pdf

以下は,理学研究科の学生向けに配布した資料です.

新型コロナウイルス対策の科学的ポイント(2021年2月現在)

理学部安全衛生管理室

  • ウイルス感染メカニズム
    • 罹患者から放出される飛沫が主たる要因(空気感染を含む)
      • 時間が経てば,指数関数的に不活化
  • 感染リスクが高い状況:食事中の会話
    • マスクを外している.曝露するウイルス量が多い.
    • 増殖している体内から出たばかりでフレッシュなウイルス
      • 不活化していないため濃度が高い(図を参照)
    • 会話をするときは,飲食後にマスクをして
      • お茶やジュース,コーヒータイムも
  • 新型コロナウイルスは空気感染します!
    • すべての教室に機械換気が設置され,フィルター清掃も実施されている
      • 30分毎の窓開けより,換気装置による常時換気が有効
    • 一般住宅の多くは機械換気がなく,あっても換気量が少ない.窓開けも有用.
    • HEPAフィルター付き空気清浄機もウイルスを捕捉できる(換気量に注意)
  • 顔にぴったり合う「ウイルス対応」マスクを!
    • ウィルスろ過効率(VFE)99%以上のフィルター付きを(不織布マスクの多くが対応)
    • 屋外で他者と距離を取って歩く場合,部屋に一人の場合などはマスク不要
  • 食事前,トイレの後などには「手指消毒」を
    • 石けんなどの界面活性剤は,手指への洗浄作用に加え,コロナウイルスの「膜」を破壊することによる不活化作用もある.石けんによる手洗いを奨励
    • アルコール消毒の場合,指先を含めた両面が十分濡れるよう,たっぷり使う
  • 若者の感染でも長期にわたり後遺症が起こることが分かってきました.感染を防ぐことで,自分の健康を守り,友人や家族,社会の命を救うことができます.対策の優先度を科学的に考え,メリハリある,無理のない対策を.

窓開けより有効で快適な換気を確実に行うために(実践報告)

Keywords: 常時換気,機械換気

30分に1回の窓開けより,機械換気による常時換気を

東北大学理学研究科では,新型コロナウイルスが流行し始めた2020年春から,機械換気のメンテナンスを行い,その活用を続けてきました.これにより,無理なく実効性の高い換気が可能になっています.2,000人を収容する満員のオーケストラ会場でも感染が報告されていないのは,コンサート会場の高度な機械換気能力の賜物です.ただし,機械換気を有効活用するにはノウハウが必要です.そこで,私たちの取り組みを以下で公開したいと思います.

  • 機械換気の能力
    • 大学やオフィスなどに設置されている換気装置は,窓開け換気よりも一般に高い(優れた)換気能力を持っています.たとえば,1時間に2回,窓開けによって換気をする場合,1時間に部屋全体の空気が入れ替わる回数,すなわち換気回数は2以下です(窓開けでは部屋全体の空気が入れ替わる保証がないため,最大でも2となります).一方,天井などに設置された換気装置を適切に使えば,1時間に5回程度の換気が,窓を開けることなく実現します.高校生が教室で授業を受けるときに必要とされる換気回数は,文科省の試算で4.4回となっていますが,これは高校生の体格に基づいて,酸欠が起こらないような換気回数として掲載されているものです.大学生は高校生より体格が大きいですので,適切に設計された教室では,1時間あたりの換気回数が5回程度になっているはずで,実際,東北大学理学研究科の教室についても,ほぼ5回前後の換気回数に設計されています.仮に,この換気回数を窓開けで実現するためには,10分に1回程度の窓開けを行う必要があります.したがって,機械換気が適切に設置されている教室においては,機械換気を第一に活用すべきことが分かるでしょう.
  • 熱交換器のメリット
    • 機械換気のメリットは,換気回数の多さだけではありません.機械換気では多くの場合,熱交換器が併設されています.たとえば,冬の寒い時期,外気をそのまま取り入れれば部屋も冷えてしまいます.その場合,部屋から排出される暖かい空気と,部屋の外から取り込まれる冷えた空気を「熱的に」接触させることで,冷えた空気を少し暖めてから部屋に取り込むことが可能となります.三菱電機のロスナイもその一つです.夏なら,暑い外気を少し涼しくしてから取り込むことができます.これによって,換気と快適さを両立させ,エアコンと併用する場合などに,省エネ効果を高めることができます.
  • 定期的メンテナンスの必要性
    • 機械換気には,このように優れた点が少なからずあります.しかし,そのメリットも,メンテナンスを怠っていると大きく損なわれるばかりでなく,部屋が密室化してしまうリスクも孕んでいます.
    • 熱交換器には一般に,埃などをろ過するためのフィルターが付いています.このフィルターに埃などが溜まってくると,空気の流れが阻害され,最後には空気が殆ど流れない状態に陥ります.そのような状況に陥いると,換気装置のスイッチをオンにしても外気は一切取り込まれず,また,部屋の中の汚れた空気も外に排出されず,窓などを開けていない場合,部屋は密室状態になってしまいます.
    • このような状況を避けるためには,定期的な清掃が必要です.熱交換器は多くの場合天井に組み込まれてあり,一般人には清掃が容易でない場合が少なくありません.その場合は,専門業者に依頼して清掃してもらうことができます.
熱交換器のフィルターが埃で覆われ,閉塞状態になった例
【動画】熱交換器フィルターを取り外して高圧洗浄している様子(2020年3月)
  • 換気能力のチェック方法(実測による換気回数の計算方法)
    • 機械換気が実際に,どの程度の換気能力があるかは,実測で確かめることができます.当研究科で行った方法をご紹介します.1時間あたりの換気回数が分かれば,機械換気によってなされている換気の効果を,1時間あたり2回の窓開け(この場合は換気回数は2回以下に相当)などと比較することができるようになります.換気装置のトラブルもチェックできます.

換気装置の風速測定方法,換気回数の計算方法

用意するもの

・風速計

・段ボール

・ガムテープ

・メジャー

・はしご

・筆記用具

・ビニールひも

・レーザー距離計(ない場合はメジャーや図面で部屋の面積を確認する)

実施方法

  1. 換気装置の換気口の大きさを測り、その口を囲えるサイズの囲いを段ボールで作成する。高さは今回15cmで作成したが、多少前後しても問題はない。ただし、あまり高さがないと段ボールの強度が劣るので注意する。また、四隅をガムテープなどで強化する。

さらに、段ボールに測定点の目印を記載しておくと風速測定の際に便利。

ダンボールで作った囲い

ビニールひもを細く裂き、簡易風向確認用具を作る。換気装置の口に風向確認用具で排気か吸気かを確認する。

排気口にダンボールを当てている例(生協食堂にて)
  • 段ボール囲いを換気口に当て、風速計で各点の風速を測定する。今回は、換気口の形が細長い長方形であるロスナイ付換気装置の場合は6点、正方形の換気装置の場合は9点を測定した。排気だけでなく、吸気側の風速も測定しておくと、風速が低い場合の原因を検討する際に有効である。
  • レーザー距離計またはメジャーで換気装置のある部屋の幅、奥行き、高さを測定する。
  • 以下の計算により、1時間当たりの換気回数を計算する。

排気側の換気風量と換気回数

(1台あたりの風速の平均値 m/s) × (換気装置の台数) × (段ボール囲いの面積 ㎡) × 3600 sec = 1時間あたりの風量 = 1時間に室外へ排出される空気の量

(1時間当たりの風量) / (換気装置のある部屋の体積) = 換気回数

吸気側の換気風量

(1台あたりの風速の平均値 m/s) × (換気装置の台数) × (段ボール囲いの面積 ㎡) × 3600 sec = 1時間あたりの風量 = 1時間に室内に供給される空気の量

1時間あたりの換気回数が多いほど、頻繁に空気が入れ替わっており、ウイルス感染のリスクを低減すると考えられる。

吸気が少ないと排気も少なくなるので、その場合は窓やドアを開ける,空気清浄機を併用するなどの対応が必要になる。

風速・風量測定の実例

(2021年4月16日現在)