東北大学

東北大学藤原研究室

東北大学藤原研究室

研究テーマ

1.ガラスから非線形光学デバイスをつくる

結晶化と非線形光学

ガラスの結晶化:物質を構成する原子や分子は、それぞれの間で相互作用があり引力と斥力の釣り合う配置で規則正しく整列し、熱力学的に安定した結晶となります。 しかし融液を急速に冷却することで、原子配置がバラバラで無秩序な構造(アモルファス構造)を保ったまま固体化する物質も存在します。

その一つが、我々の研究対象であるガラスです。 ガラスは前述の通り、結晶とは異なるアモルファス構造であるものの、熱力学的には不安定な相です。 そのため、原子・分子が十分に拡散できる温度で保持すると、安定な結晶相へと相変化します。 この現象を結晶化と呼び、結晶化ガラスが得られます。

非線形光学効果:一般に物質と光との相互作用は、物質内で生じる電気分極Pの光電場Eの応答で記述することができます。 身近に生じる光学現象(屈折、反射、吸収、散乱、etc.)はこの電気分極の光電場に対する線形応答で与えられます。 ただし、ε_0は真空の誘電率、χは電気感受率とします。

 一方でレーザーにより時間的・空間的に高いエネルギー密度の光を発生させることができるようになり、上記の線形以外の応答が顕著に現れるようになりました。 具体的には以下の式で与えられるような二次や三次に応答する成分が現れます。

 特に二次に応答する分極に起因して、倍周波数の光が発生する第二次高調波発生や外部電場で光学定数が変化するポッケルス効果といった非線形光学現象が得られます。 これらの非線形光学現象を応用した光学デバイスは、広く利用され更なる研究が期待されています。

 これらのデバイスは光学単結晶を用いており、製造や加工が難しく非常に高価であるデメリットが存在します。 そこで我々の研究室では、製造・加工性が高く量産性に優れ、コストを大幅に削減できる可能性のある結晶化ガラス材料に注目しました。 光非線形性を持たせたガラス(結晶化ガラス)をデバイス材料に応用するための研究を行っています。

(林原、大槻)


2.割れないガラスの構造と評価

 私たちが日常生活で目にするガラスは一般的に、SiO2を主成分としその他の元素(Na、Ca、Mgなど)が用途に応じて添加された組成をしています。
その構造は、主成分であるSiO2がSiO4ユニットと呼ばれる正四面体型の単位構造を成し、それらがO原子を介して網目状に結合した形をとります。(これをガラスネットワーク構造と呼びます)そして、添加元素がある際には、このネットワーク内に他の元素がイオンとして点在します。

 酸化物ガラスのもつ長所として、透明性・易加工性・耐候性が挙げられ、私たちの生活を幅広く支えている優れた材料であるといえます。
しかしながら、ガラスには割れやすいという最大の欠点が存在しており、長期間使用する上で機器の信頼性・安全性に不安が残る材料でもあります。そのため長きにわたり、より割れにくい、もしくは割れても危険性の低いガラスが求められてきました。

 我々が研究対象としている化学強化ガラスは先の欠点を克服するために、ガラス表面にK+などのイオン半径の大きなアルカリイオンを導入することで圧縮応力層をつくり、強度を上昇させたガラスです。
高強度・強化手法の簡便さ、先に挙げた酸化物ガラスの持つ応用性の高さから注目を集め、近年ではスマートフォンや太陽光パネルのカバーガラス・旅客機のフロントガラスなどに広く用いられています。これらの製品の需要は今後高まり続けることが予想されており、それに応じて強化ガラス製造技術の向上が要求されています。

 強化ガラスの製造法を次に説明します。
 現在、化学強化ガラスの一般的な製法として、イオン交換法が採用されています。

 イオン交換法では、ガラスを350~400°C程度に熱し液体状態にしたKNO3融液に浸すことで、ガラスネットワーク間に点在しているNaイオンとKNO3中のKイオンを熱拡散に利用して交換し、強化を行います。Kイオンがガラス中に導入される際、これまでNaイオンが存在して平衡状態であった構造により大きなKイオンが押し込まれるために、ガラスネットワークが圧迫され、強度が上昇します。

 強化ガラスの強度を評価する指標には、ガラスネットワークを圧迫している力(=圧縮応力)が用いられています。そして特に表面の圧縮応力の値(Compressive Stress:CS)と応力が0となる深度(Depth Of Layer:DOL)が重要視されており、如何にすればこの2つの指標を高水準(表面の強化層をより固く、より深く)にできるか各所で研究が行われています。

 またそのような研究をする一方で、作製した強化ガラスが高水準のDOL・CSをもっており、割れにくいガラスであることを検査により保証する、そのための手法を開発する必要あります。特に強化ガラスでは、表面から数十μmの間での急激な応力変化を見積もるための、よりミクロな検査が求められています。
 そのため我々の研究室では、現在用いられている検査手法よりも高分解能な手法を提案し、ガラス技術のさらなる発展を目指そうと、研究を行っています。
(佐々木)


3.体の中の温度を測る

 研究テーマの一つとして「生体深部温に対する新規測定法の開発」があります。医療領域において、脳や心臓といった生体深部の温度を、生体を傷つけることなく測定する方法が求められています。本研究では、「生体の窓」と「残光体」を組み合わせることで、新しい測定法の確立を目指しています。
 生体の窓とは、近赤外光が生体組織に吸収されることなく透過する性質を意味します。生体の窓を利用することで生体を傷つけることなくその深部の情報を得ることができます。
 残光体は、光のエネルギーを蓄え、外部から熱や光の刺激を与えることで光を放出する蓄光材料です。残光体から放出される光には周囲の温度に関する情報が含まれています。さらに、輝尽発光(レーザー刺激によって照射部のみで発光する現象)を利用することで、微小領域での位置選択的な温度測定が期待されます。
(大橋)


4.熱流を電気でコントロール

研究背景

 光や電気を自在にコントロールする技術が確立された現在、インターネットなどの高速通信が普及し、私たちの身の回りは多くの電子機器であふれています。しかし、同じエネルギーである熱エネルギーは光や電気のように上手く扱うことが容易ではありません。例えば、小型化が進む電子デバイスでは、熱を上手く排出することが出来ず、デバイス温度が上昇することで、熱暴走や素子寿命の低下が起こってしまいます。さらに、電子デバイスなどから排出される低温の廃熱 (~200℃)はその排熱量が膨大ですがそのほとんどが未利用であるため、この廃熱を新たなエネルギーとして利用する熱マネジメントに関する研究が幅広く行われています。

本研究の目的

 本研究では、熱流を光や電気のように自由自在に制御することが可能なデバイスの開発を目指しています。具体的には、下図に示すような、熱の量や方向を外場のON、OFFを用いて瞬時に変化させるような熱スイッチングなどがあげられます。その達成のために、本研究室ではスピン熱伝導性物質 (La5Ca9Cu24O41)という材料に着目しています。

スピン熱伝導性物質について

 一般的に熱は伝導電子や格子振動 (フォノン)を介して運ばれていきます。しかし、スピンも熱の運び手になることが知られています。このスピン熱伝導はスピン方向に対してのみ熱を多く運ぶという特徴を有しています。スピンによる熱伝導のイメージを図3に示します。構造内にある互い違いに並ぶスピンは、互いに影響を及ぼしあうため、熱エネルギーによって1つのスピンの向きが反転すると、隣のスピンも向きが反転します。このようなスピンの反転が連鎖的に繰り返されることによって、スピンが揃う方向に熱を大きく運ぶことができます。

現在の研究

 現在はスピン熱伝導性物質をスパッタリング法により薄膜化し、ラマン分光を用いて、電圧印加がスピン状態へ及ぼす影響を調査し、周波数領域サーモリフレクタンス法を用いた熱伝導率変化の測定を行っています。
(町田、奈良)

Fujiwara Laboratory

Department of Applied Physics, Graduate School of Engineering,
Tohoku University

6-6-05, Aoba, Aramaki, Aoba-ku, Sendai 980-8579

Copyright © 2019 Fujiwara Lab. All Rights Reserved.
トップへ戻るボタン