このコーナーでは,平成23年度に採択された,財団法人 JKA の小型自動車等機械工業振興事業に関する補助事業 (事業名 「次世代はんだ材料の先進評価手法の開発補助事業」) について,その進捗状況ならびに実績報告を掲載しています。
補助事業名: 次世代はんだ材料の先進評価手法の開発補助事業
補助事業者: 東北大学大学院工学研究科 教授 坂 真澄
事業完了期限: 平成24年3月31日
補助事業の目的:
本研究では鉛フリーはんだの定量的なエレクトロマイグレーション(EM)耐性評価手法を新規に提案することを目的とする。ここに本研究の鍵は,従来のはんだEM研究の問題点を打開する2次元はんだサンプルの新規提案にある。当該サンプルを用いたEM耐性評価試験のための理論モデル構築では,EMによる原子流束の発散を閉じた解析式として導出し,EM現象を支配する活性化エネルギー等を定量的に算出する。これにより,従来数値計算によっていたため設計・生産現場での利用が困難であったEM解析の利便性を飛躍的に改善する。さらに,はんだのEM機構の徹底解明のために,開発する新規2次元はんだサンプルについて,EM試験中のはんだ内のボイド・ヒロック成長過程をその場観察する。以上を踏まえ,産業界で待望のEM耐性に優れた次世代はんだ材料の開発指針を提案する。
補助事業の実施方法:
個別研究として研究代表者である申請者が中心となって実施し,日野航太(東北大学大学院工学研究科修士課程学生),趙 旭(同 博士課程学生)の研究補助を受けて実施する。
実施報告:
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はんだ材料評価のための試験片形状を考案し,作製した。11月初旬には耐性試験を開始する。(平成23年10月26日)
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サンプルの提案と理論モデルの構築
EMを効率的に発生させるためには駆動力である電流密度を集中させる必要がある。そこで先端を尖らせた銅配線,およびはんだからなるサンプルを提案した。電気抵抗率の関係から電流のほとんどは銅の中を流れると仮定でき,銅先端での点入出力状態であるとして理論モデルの構築を行った。(平成24年8月2日)
図1 構築した理論モデル
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はんだ材料評価のための試験片形状の考案,作製
構築した理論モデルを実現できる試験片の考案および作製を行った。銅配線がプリントされたプリント基板にはんだを流し込み,銅配線が露出するまで研磨を行うことで試験片を作製した。(平成24年8月2日)
図2 作製した試験片
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EM耐性試験の実施
作製した試験片を加熱し,通電することでEM耐性試験を行った。試験の結果,はんだ上にEMの影響が確認され,本手法に基づくEM耐性評価の可能性が示唆された。(平成24年8月2日)
研究成果の発表:
(1) 「鉛フリーはんだのエレクトロマイグレーション耐性簡易評価手法の開発」,日本機械学会東北支部第47期総会・講演会(平成24年3月13日)
(2) 「鋭利な先端を有する銅配線を用いた鉛フリーはんだのエレクトロマイグレーション耐性評価」,日本機械学会第20回機械材料・材料加工技術講演会(M&P2012)(平成24年12月2日)
(3) 「異種金属微細接合部での原子の蓄積とはんだのEM評価への応用」,日本機械学会東北支部 第48期総会・講演会 講演論文集)(平成25年3月15日)
(4) 「International Symposium for the 70th Anniversary of the Tohoku Branch of the Chemical Society of Japan」 (28-30 September, 2013, Kawauchi-Kita Campus, Tohoku University, Sendai, Japan) (日本化学会東北支部70周年記念国際会議,平成25年9月28〜30日,仙台)において 「Testing Electromigration Resistance of Solders in Stripe」 を発表。
これにより, M. Aoyama(青山美幸)が Poster Award (優秀ポスター賞) を受賞。
(5) 「Evaluation of Electromigration Resistance of Lead-free Solders Using Unpassivated Stripe-shaped Samples」, Microsystem Technologies, (2014), 9pages (Online).
(6) 「Evaluating the Electromigration Resistance of Lead-free Solders by Utilizing the Sharp Tip of a Cu Trace」,Int. J. Materials and Structural Integrity, 9 (4), (2015), 216-227.
【財団法人 JKA 関連サイト】
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