CREST(戦略的創造研究推進事業)

  CRESTとは(JSTホームページ)


課題名「光合成初期反応のナノ空間光機能制御」(平成20−25年度)

 研究領域「新機能創成に向けた光・光量子科学技術

  代表者 橋本 秀樹(大阪市大)
 分担者  南後 守  (名古屋工大)
 分担者 吉澤 雅幸(東北大)
 

全体の研究目標

 光合成細菌の光合成系は,自然が創造した超高速(100フェムト秒以下)かつ高効率(〜100%)な光エネルギー変換機構を解明するための本質的なバイオナノデバイスで あるばかりでなく,太陽光エネルギーの有効利用と言う観点から眺めた場合,人類の存亡に関わる根源的な問題解決 に向けての急務な研究対象である.

 光合成初期過程の機能発現には,LH2,LH1と呼ばれる2種類のアンテナ色素蛋白複合体と光反応中心複合体(RC)の合計3種類の色素蛋白複合体が関係している.原子間力顕微鏡(AFM)を用いた光合成膜のその場観察により,図1に記したように,これら3つの色素蛋白複合体が自己組織化により集積した超分子配列が,機能発現に密接に関係している様相が明らかにされつつある.

 本研究では,天然由来の色素蛋白複合体及び精密有機合成と分子生物学の技術を駆使して色素および蛋白構造を改変した人工の色素蛋白複合体を脂質二重層膜に任意の比率で配列させた人工光合成膜を創成する.透過型電子顕微鏡(TEM)及び原子間力顕微鏡(AFM)により膜内での色素蛋白複合体の超分子配列の確認を行いながら,極限の時間分解能と安定性を有するコヒーレント分光計測と時間分解顕微分光計測を適用することにより,光合成初期過程の真の実時間計測を達成し,世界にさきがけて,個々の色素蛋白複合体間の位相緩和情報も含めたエネルギー伝達のメカニズムの本質的な理解を達成する.