14 Aug 2014

非線形光学結晶におけるテラヘルツ帯光学定数の決定法

共同研究者:大野誠吾, 宮本克彦, 南出泰亜, 伊藤弘昌

非線形過程を用いたテラヘルツ光の発生

テラヘルツ波の発生方法が提案されており、有機非線形材料中での光整流や差周波発生をもちいた方法ではテラヘルツ帯から中赤外領域におよぶ電磁波発生が報告されている。これらの過程において媒質中における位相整合条件を満たす必要があり、発生にかかわる波長帯における屈折率、吸収係数といった光学特性は重要な情報となる。 本研究ではテラヘルツ波発生においてその高い非線形性から注目を集めている有機非線形結晶DASTにおいてテラヘルツ帯での光学特性を決定した。

測定方法

測定原理は同軸上の差周波発生過程に基づく。 つまり、異なる波長の光を媒質に入射したときのテラヘルツ波強度を測定し、その入力波長依存性からテラヘルツ帯における屈折率及び吸収係数を決定する。 吸収のある媒質での出力スペクトルは、関係する波長、その波長における非線形材料の屈折率、吸収係数を使って1,2

で与えられる。 スペクトルの形状には、上記のパラメータの情報が含まれており、テラヘルツ帯以外のパラメータがわかれば、スペクトルの特徴からテラヘルツ帯での屈折率、吸収係数を求めることができる。

DAST結晶における測定では二波長同時出力KTP-OPO光源の波長をそれぞれ1260 nmから1760 nmまで変化させDAST結晶へ入射したときのテラヘルツ波強度をSiボロメータで検出した。

結果

求まった屈折率スペクトルおよび吸収スペクトルを下図の点において示す。 ビットマップ作成
屈折率の低周波帯では既に報告されている値と良い一致をしめすことは確認済みである。 また、吸収スペクトルではFT-IR測定の結果とピークの位置や吸収係数の大きさともよく合う。 この方法の特徴として、非線形材料からテラヘルツ帯の光が出さえすればよく、サンプルの厚さなど制御する必要がない。 この方法はDAST結晶以外での非線形結晶にも応用できるものと考える。

参考文献

論文

Seigo Ohno, Katsuhiko Miyamoto, Hiroaki Minamide, and Hiromasa Ito,
"New method to determine the refractive index and the absorption coefficient of organic nonlinear crystals in the ultra-wideband THz region,"
Optics Express 18, 17306-17312 (2010)
doi:10.1364/OE.18.017306