私達は、光の量子である光子を扱う量子光学と量子技術の研究を進めています。
光の量子である光子は、人類が量子現象(黒体輻射や光電効果など)を理解するための重要な概念でありました。そして現在では、光子は基礎物理のみならず、量子計算、量子暗号、量子計測などの量子技術における重要な資源となることが期待されています。
私達の研究では、光子がもつ古典論的直観に反する「量子もつれ」や「量子揺らぎ」を理解し、制御すること、量子の世界のさらなる理解と量子技術の仕組みを実証していくことを目的としています。特に現在は、単一光子レベルでの非線形光学、新たな多光子干渉の実証、光子の量子もつれの発生と測定、任意の量子光状態の発生、光量子ゲート技術開発、そして量子情報プロトコルや量子計測の実証などに挑戦しています。
励起状態の測定に必要な時間分解分光装置の開発も行っています。超短パルス光を自在に制御して物質を任意の状態に励起することで、通常の分光法では測定できない物性の本質を解明します。
物理の「出前授業」も積極的に行っています。
左図:光合成系の色素蛋白複合体、中図:分子内包カーボンナノチューブ、右図:レーザー分光装置
光と物質の線形・非線形の相互作用を高度に利用・開拓することにより、新奇な物理現象の解明と物質機能の創出を行っています。特に、電子の電荷を基にした現代エレクトロニクスを超え、電子のスピン(磁石の性質)を組み込んだ量子物性機能を探索しています。
例えば、対称性や光応答を人工操作した磁性メタマテリアル、磁性体と誘電体の特徴を兼ね備えるマルチフェロイック物質、電磁気学では禁止されている磁気モノポールなどを実現するメゾスコピック人工磁性体、さらに、特異な性質を有する磁性体・誘電体・金属・半導体・絶縁体などを舞台に、独自開発した光技術を用いることで、将来のテクノロジーを支えうる新しい物理原理や光物質機能の開拓を目指しています。
具体的には、
・光により電子スピン(スピン配列・スピン流)を制御する新規光スピントロニクス原理の開発
・高度な光イメージング技術を用いた量子物性機能の解明
・特殊なスピン配列を利用した電気磁気制御技術の開拓
・磁性と誘電性を結合する電気磁気光機能(光のダイオード機能・波長変換機能・光電変換機能)の創出
など、光(フォトニクス)−電気(エレクトロニクス)−磁気(マグネティクス)を融合する最先端の光物質科学を開拓します。
金属、半導体、磁性体などを用いた時空間変調メタマテリアルを創成しています。 光物性や電子物性の知見を駆使し、マイクロ波、テラヘルツ光、可視光などの光を創る・操ることを目指して、基礎原理から応用展開まで幅広く研究しています。
これまでも自然は微細な構造で光を操ってきました。モルフォロ蝶や玉虫、宝石のオパール、蛾の眼などが良く知られています。20世紀に入って人類は、電子とのアナロジーを基に、人工的に作製した微細な構造(メタマテリアルやフォトニック結晶)で光を操ることを始めました。その中で私たちは、人工構造を空間的、時間的に変調することで、新たな光物性を開拓しています。
具体的には以下の研究テーマを展開しています。