Electric Propulsion

-深宇宙探査に向けて-

磁気セイルの推進性能の向上に向けた数値シミュレーション


近年, 生命や宇宙の起源の解明を目的とした深宇宙探査が注目を浴びています. 深宇宙探査は長距離・長期間の運用が予想されるため, ミッションを支える大推力・高比推力(低燃費)の推進システムが求められており, その一つとして宇宙空間の太陽風プラズマを推進剤として利用する「磁気セイル」が提案されています. 機体に搭載された超電導コイルが作り出す人工的な磁場の帆によって太陽風プラズマを捕捉し, その運動量が誘導電流を介したローレンツ力として機体に伝わることで, 太陽を背にした方向へ推力を獲得する仕組みです. 機体に推進剤を搭載する必要がなく非常に高い比推力を実現できるものの, 深宇宙探査に十分な推力を獲得するには直径数 km のコイルを用いて巨大な帆を形成する必要があり, 現実的ではありません. さらに, 巨大な冷却装置に起因する推力重量比の低下も指摘されていて, 磁気セイルの実用化には推力と推力重量比の両方の向上が求められています.

本研究では, 磁気セイルの推力向上と高推力重量比化を目的として複数の気体を用いた編隊飛行を新たに提案し, 機体周りの太陽風プラズマにおける電磁プラズマ粒子シミュレーションを行うことで, 機体周りに形成される磁気圏の構造や推力特性を明らかにするとともに, 編隊飛行の優位性を検証します.