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まなびの道 Student Activities女子ボート選手の活動とChica

2024.3.15 更新


女子部の発足と展開

他の運動部と同様、東北大学の漕艇部(以下「ボート部」)は、戦前はもとより、戦後も長く女子選手が存在していませんでした。男子だけの合宿所に加わり、初めて女子選手として活動を始めたのが1979年入学の良知暢子(1960-2023)です。すでに高校時代にインターハイ3位の実力を持ち、全日本選手権(当時はまだ男子と別大会の「全日本女子選手権」)の決勝で覇を争うだけでなく、学内外の女子選手の組織化にも携わり、部内では敬意をこめて「始祖鳥」と称されました。

第26回 北大定期戦(1982年)の女子クルー(右7名が北大、左5名が東北大学、良知は前列左端)『図南会々報』32

良知が切り開いた道を押し広げたのが、1984年入学の田中あゆ子でした。1986年のアジア大会(韓国・ソウル)や翌年のユニヴァーシアード(ユーゴスラビア・ザグレブ)の女子のシングルスカル種目(選手1人/オール2本)日本代表に選出され、世界を目指す先駆者となりました。

アジア大会の会場で配布されたニュースレターの表彰場面(右が3位の田中)田中あゆ子提供

その後も、人数は多くないものの女子選手の活動が連綿と続き、1999年には舵手無しペア種目(選手2人/オール2本)がインカレ(全日本大学選手権)で優勝(学生日本一)、さらに2013年にはダブルスカル種目(選手2人/オール4本)が全日本選手権で優勝しました(日本一!)。卒業後もボートを続け、頂点を目指す選手も出てきています。

2013年に日本一になったダブルスカル(左:吉川 右:細田)『図南会々報』63

Chicaクルーの挑戦

2020年のインカレ種目の変更に伴い、新たに4人漕ぎの種目への挑戦が始まりました。ローマ五輪の日本代表だった大先輩から寄附を頂き購入された新たな艇は、グレードがトップクラスで、ボート競技者にとって一度は乗ってみたい憧れの対象でした。
ボート部には、それぞれの艇に名前を付ける習慣があります。今回も女子部員や先輩方の間で議論した結果、日本初・東北大学初の女子大学生の一人であり、偉大な功績を残された黒田チカさんのお名前にちなんで、「Chica」と名付けられました。

進水式で2020-21年クルー(左から中川、香門、高木、安藤)東北大学漕艇部提供

2021年は、2020年と同じメンバーがChicaに乗りインカレのレースを戦いました。コロナ禍で練習が思うようにできない期間も長くレース経験も十分でなかったものの、部内男子の別種目の艇とレース形式で練習を行うことで、必要な課題を明らかにしていきました。インカレ本番でも粘り強い漕ぎで決勝に駒を進め、その結果高校からのボート経験者の多い私立大学を退け、見事3位となりました。

2021年インカレ決勝(埼玉・戸田)東北大学漕艇部提供

東北大学ボート部は、その後のインカレにおいても、2022年には女子ダブルスカル種目で準優勝、2023 年には男子エイト種目(漕手8人+舵手/オール8本)で3位と、入学後初めてボートに触れた選手が多いながらも、強豪校に劣らない戦績を残しています。
現在、ボート部の女子選手は9人で活動しており、約30名が活動している男子選手に比べると人数は少ないものの、それぞれがボート競技に真摯に向き合っています。ボートは同じ動作を繰り返すシンプルなスポーツですが、言い換えればその一漕ぎが勝敗に直結するのです。より速く艇を進めるにはどうしたら良いのか、選手は自分の頭で考え、部員やコーチと対話して、試行錯誤を続けます。学生には手が及ばない部分は、専門知識をもつ外部コーチから、より良い漕ぎやフィジカル強化に必要なことを学びます。このように、高いレベルで練習できる環境の整っていることが、東北大学ボート部の強みです。

陸上トレーニング風景 東北大学漕艇部提供

ボート競技は道具を使うスポーツです。先輩方が経験した喜びや苦しみ、興奮と全く同じものを感じることはできませんが、その時と同じ艇に乗って戦うことはできます。私達は今年のインカレで Chica に乗り、メダル獲得という目標に向かってさらに努力を続けます。

原稿/ 学友会漕艇部長 曽根原理(史料館助教)
女子部副将 菅田志織(工学部3年)

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