Microwave nondestructive testing - マイクロ波探傷法
Page 1 : 非破壊検査
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原子力発電所の保全活動
原子力発電所の長期利用は、二酸化炭素排出量の低減、発電コストの低減に貢献します。この長期利用のためには、原子力発電所の健全性を確保し、稼働率を向上させることが必要であり、そのために非破壊検査の高速化、高度化が求められます。現在、実用化されている超音波探傷法や渦電流探傷法は、高精度である一方、検査に時間がかかるという欠点があります。大規模な配管システムを有する原子力発電所などの大型構造物では、検査の長期化は稼働率の大幅な低下、すなわち発電コストの増加を意味します。
そこで当研究室では、高速検査ができる可能性のある『マイクロ波探傷法』を提案し、研究開発を進めております。マイクロ波は、配管内を高速伝播し、配管の欠陥部で反射します。マイクロ波を発振してから反射波を検知するまでの時間や、超音波の振幅や位相の変化などから、欠陥の場所、形、大きさなどを判断することができます。
マイクロ波探傷法は既存の非破壊検査に比べて、高速で欠陥位置を検知することができますが、欠陥の形、大きさを検知する精度が悪い可能性もあります。したがってマイクロ波探傷法の技術が確立された場合、以下のような複合検査を行うことが効率的であると考えられます。
上記のような複合検査により、非破壊検査の高速化、高度化が図れると考えられます。
マイクロ波探傷法の原理と実験体系
一般的にマイクロ波発振器は矩形導波管に接続されています。実際の検査対象となるのは円形管なので、矩形導波管を用いる場合にはマイクロ波のモードを矩形モードから円形モードへ変換する必要があります。
当研究室では、モード変換器(Fig. 3)を用いて、マイクロ波のモードを矩形TE10モードから円形管の周方向き裂の検知に有効な円形TM01モード、
円形管の軸方向き裂の検知に有効な円形TE11モードに変換し、き裂を有する被測定管にマイクロ波を入射して
マイクロ波探傷法の原理実証を行いました。
Fig. 3 - モード変換器 |
Fig. 4に実験体系を示します。マイクロ波発振器(ベクトルネットワークアナライザ)から発振されたマイクロ波はモード変換器を経由して、被測定管に到達し、被測定管を透過した透過波、被測定管で反射した反射波をベクトルネットワークアナライザで計測します。
Fig. 4 - 実験体系 |
実験の一例
実験条件(Fig.5参照)
マイクロ波周波数 : 5 GHz−15 GHz
被測定管 : 管内径34 mm、長さ1000 mmのSUS304製の円管
き裂の種類 : 周方向半周き裂
き裂位置 : 被測定管の端から700 mm
き裂幅 : 0.3 mm
Fig. 5 - 実験条件 |
Fig. 6 - 実験結果 |
検地情報
(反射振幅比)
=(反射波の振幅)/(入射波の振幅)
検地情報
1. き裂のない円管の反射振幅比を測定する。
⇒データ@
2. き裂のある円管の反射振幅比を測定する。
⇒データA
3. (データA)−(データB)を求める。
実験結果(Fig.10)
マイクロ波がマイクロ波発振器からき裂に到達し、反射して検知器に戻ってくるまでの時間(計算値)と反射振幅比が大きくなり始める時間(実験値)が一致しています。
参照
稼働率:
総時間に対する発電所が運転期間の割合のこと。例えば、点検などで、1年間(365日)のうち、30日間、発電所が停止し、残りの335日間運転されてたとすると、
(稼働率)=(運転期間)/(総時間)=335/365=0.918=91.8%
となります。 [本文に戻る]
Fig. 7 - 軸方向成分 |
マイクロ波のモード:
マイクロ波は波長の大きな電磁波のことです。電磁波は電場(電界)、磁場(磁界)が交互に空間上に発生し、伝播していくものですが、電場の成分、磁場の成分がどうなっているかで、電磁波をモードというもので分類することができます。
・TMモード:電場の軸方向成分 Ez ≠ 0,磁場の軸方向成分 Hz = 0
・TEモード:電場の軸方向成分 Ez = 0,磁場の軸方向成分 Hz ≠ 0
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Fig. 8 - 矩形TE10モード |
矩形TE10モード:(Fig.8)
現在、主に使用されているマイクロ波発振器は矩形(長方形)導波管に接続されています。矩形導波管内ではFig.6のような電場、磁場が形成されます。
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Fig. 9 - 円形TM01モード |
円形TM01モード:(Fig.9)
発電所で用いられている配管は円形管です。円形管にTM01モードのマイクロ波が伝播しているとき、下記の現象が起こります。
表面電流が軸方向に流れる。
⇒ 周方向き裂に表面電流が乱される。
⇒ 周方向き裂の情報を検知できる。
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Fig. 10 - 円形TE11モード |
円形TE11モード:(Fig.10)
円形管にTE11モードのマイクロ波が伝播しているとき、下記の現象が起こります。
表面電流が軸方向に流れる。
⇒ 軸方向き裂に表面電流が乱される。
⇒ 軸方向き裂の情報を検知できる。
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