コンピュータき裂によるき裂透水性の寸法効果評価　　千田　祐介

はじめに

　高レベル放射性廃棄物の処理方法として現在注目されている地層処分や，発電量の飛躍的増加が見込める高温乾燥岩体型(Hot Dry Rock)の地熱発電がある．これら方法では地下のき裂透水性を
明らかにすることが重要である．そこで，本研究では，以前の研究で実測されたき裂面データを基にして，最大約13mまでの大規模き裂をコンピュータ上に作成し，それを対象とした透水性のシミュレーションを行い，透水性の寸法効果を評価した.

結果

　透水性シミュレーションは，垂直変位のみを与えたき裂間隙と，せん断変位を与えた後に垂直変位を与えたき裂間隙の2つの場合に対して行った．
　 垂直変位のみ与えた場合の透水性は，標準偏差がほぼ一定となるサイズ200 mm以上のき裂で平均間隙幅が等しい場合，透水性に寸法効果が現われなくなる．
　 これに対してせん断変位を与えた場合，せん断方向に直交する方向の透水性が平行な方向の透水性よりも大きくなり流れに異方性が生じる．これはせん断方向に直交する方向に卓越した「水みち」が発生するためであり，この影響から標準偏差が増加しても目立った寸法効果が見られなかった．また，この「水みち」はせん断変位の逆数の周期で発生し，「水みち」の高さ分布もせん断変位とともに大きくなる．このことから透水性はせん断変位に強く依存していることがわかる．