3GAKKOUへ泊まろう回顧録

平成14829

 

 本年度のGAKKOUへ泊まろう−ホグワーツ魔法魔術学校上杉分校−は817日,18日の2日間にわたって,児童**名(宿泊児童**名,日帰児童**名),保護者**名(宿泊協力者**名,日帰協力者**名)の参加者を集めて実施されました。今回は低学年児童(3年生以下)も保護者同伴という条件で宿泊を許可しております。早朝から小雨模様の天気で,野外における活動が実施できるか不安を残したまま,体育館で開校の時間を迎えました。

 

 宮沢上杉チャンネット代表の開校の挨拶,櫻田校長先生の挨拶で”GAKKOUへ泊まろう”は始まりました。時を同じくして,東北放送によるラジオの生放送も行われています。出演は筆者,**さん(*年),**さん(年),**さん(年)の4名。生放送という緊張感の中,テンション上がりすぎの筆者の話は,はたして”GAKKOUへ泊まろう”の趣旨を的確に説明できていたのか疑問の残る所ではありますが,子供達の話し振りから,本イベントの魅力が東北全土に知れ渡ったのは疑う余地の無いところでしょう。

 

 参加児童は10名程度のグループに分けられますが,このグルーピングにも今回は趣向を凝らしています。ハリーポッターに倣い,子供達は組み分けの儀式によって,グリフィンドール,ハッフルパフ,スリザリン,レイブンクロー,ロックハート,ダンブルドアの6つの寮(グループ)に分けられました。参加児童はホグワーツ魔法魔術学校上杉分校の生徒として入学を許可されたのです。ハリーポッターでは4つの寮しかありませんが,上杉分校は児童数が多いため寮を増やしました。参加児童が一人づつ組み分け帽子を被り名前を告げると,帽子が所属するグループを告げます。各グループには監督係(6年生)がいてグループをまとめ,低学年の世話をしました。

 

 グループ毎に交流を深めながらの昼食の後,メインイベントの一つ「木元竹末(きもとたけうら)」が始まります。このタイトルだけで何をやったのか分かるのは参加者だけかもしれませんね。この言葉の意味は「木は根元の方から,竹は末(枝先)の方から割ると真直ぐに割れやすい。」というものですが,今回は竹を使った玩具「野菜鉄砲」を作るということなので,竹の性質も知ってもらおうと,このような欲張った(?)タイトルになっています。指導は伊藤前校長先生にお願いしました。

 

野菜鉄砲は,「慣性の法則」に基づいた玩具です。何やら難しい話になりそうですが,原理は至って簡単です。運動している物体は壁にぶつかるとそこで止まってしまったかに見えますが,実は依然としてその運動を続けようとしています。この性質のことを「慣性」といいます。歩いていて石につまづくとつんのめるでしょ。あれと同じです。野菜鉄砲作りでは,この「運動する物」と「壁」を作ることになります。直径約5cm,長さ約20cmの竹を4分の1程度に割り,端から3cm程度の所に直径約5mmの穴を開けます。この穴付き竹が「壁」になります。「運動する物」としては竹串のようなものを作ります。この竹串様の物も「壁」作りに用いた竹の板を使って作ります。この竹の板をひたすら竹串のように細く(「壁」の穴をスムーズに通る位の細さ)削れば良いのですが,注意すべきは,片方の端から3cm程度は削らずに残しておくことです。出来上がりは「握る所の大きな竹串」となります。削らずに残した部分の中央に輪ゴムが通る位の穴を開け,「運動する物」の完成です。「運動する物」を「壁」の穴に通して,「運動する物」の握りの部分の穴に輪ゴムを通し,この輪ゴムを「壁」に巻いて固定します。これで「野菜鉄砲」の完成です。「壁」を持って,「運動する物」を引っ張ると輪ゴムが伸びます。「運動する物」から手を離すと輪ゴムの縮む力で「運動する物」は「壁」の穴の中を運動しますが,当然,削り残した部分で引っかかって止まります。さて,この「運動する物」の先端に大根などの野菜の切身(1辺1cm程度の立方体)を刺して同じことをやると,「運動する物」が「壁」に衝突すれば,「運動する物」自体はその場で止まってしまいますが,先端に刺した野菜の切身は運動し続けようとしていますので,先端から勢い良く飛んでいきます。

 

 グループ毎に協力しながら,のこぎり,切り出し,なた,木槌,紙やすりを駆使して「野菜鉄砲」を作りました。「運動する物」の竹串を作るのが一苦労です。低学年の児童は,父兄の方に協力してもらいながら何とか完成させました。2時間程度で全ての子供達が完成させることができました。余談ですが,特大の野菜鉄砲も作りました。父ちゃんの威厳を見せ付けるという高尚な発想で作り始めたのですが,出来上がった時点では単なる見掛け倒し。しかし,後で,桧舞台が待っていました(後述)。

 

作った「野菜鉄砲」でグループ対抗の的入れ合戦を行ないました。日頃,市販されている玩具で遊んでいる子供達も,自分で作った玩具だけに思いもひとしおです。目を輝かせ,大きな歓声を上げてゲームを楽しみました。中には,自分の「野菜鉄砲」のチューニングを(調整)試みる子もいたりと,企画をした側からすれば期待した以上の成果を上げられたのではないかと考えています。何を隠そう,ご指導頂いた伊藤前校長先生が一番驚いておられました。(皆出来るか不安だったようです)

 

 ひとしきり体を使って遊んだ後は,静かに空想をする時間です。佐々木**さんという方にお願いして民話を聴かせてもらいました。佐々木さんは,300話以上もの民話を語ることのできる語り部として著名な方です。今回は,夕食前とキャンプファイヤーの前に数話お話をしてもらいました。日頃,このような話に接することの少ない子供達も,この時ばかりは場の雰囲気と佐々木さんの巧みな話術の術中にはまります。子供達は,自分の頭の中に拡がった民話ワールドの中で,楽しいひと時を過ごすことができました。

 

 体を使って,頭も使えば腹が減ります。待ちに待った夕食の時間です。メニューは牛丼,春雨サラダ,野菜サラダ,かぼちゃの煮物,漬物です。お母さん方が腕によりをかけて作ってくれました。とてもおいしく頂けました。

 

 早朝の小雨も上がり,野外でのメインイベント,キャンプファイヤーができることになり,子供達の気勢もあがります。もっとも,楽しみにしていたのは子供達以上に,父ちゃん達だった気がします。キャンプファイヤーの見せ場は点火の瞬間にあります。如何にして点火させるか。キャンプファイヤーの準備を進めつつも父ちゃん達の苦悩は続きました。実は,この日までに様々なアイデアは出るものの,どれも決め手に欠き,ついにその日を迎えた経緯があったのです。しかし,一筋の光明が差しました。「あの見掛け倒しだ!」。父ちゃん達の威厳の拠り所,特大野菜鉄砲を使って点火しようということになりました。野菜の切り身の代わりに,火玉をつけて飛ばし,これで点火させようというものです(良い子の皆はまねしないでね)。首尾は上々,その時を迎えました。上杉チャンネットのウィリアム・テルこと遠藤さんの手から放たれた火玉はものの見事に命中。一瞬にして炎が燃え上がりました。この演出には子供達も満足してくれたようです。一方,父ちゃん達はというと,父ちゃんの威厳は何処へやら,そこには,ただ狂喜乱舞する父ちゃん達の姿があるだけでした。

 

 キャンプファイヤーを囲み,伊藤前校長先生のアコーディオン演奏で歌を歌いました。皆の歌声が,キャンプファイヤーの炎と共に上杉の夜空に舞い上がりました。

 学校探検もしました。いわゆる肝試しですが,高学年は一人づつ,低学年は2人一組となり探検に出発です。いろいろと不吉な噂のある所もあるようですが,全員無事帰還することができました。

 

 夜も更けて,就寝の時間を迎えました。ここで,簡単な実験をやりました。タイトルは「おやじの灯火」。タイトル通り(?)の癒し系の実験です。エネルギーの大切さ,灯りの持つ暖かさを知ってもらおうと企画したもので,ペンシルの芯を使って灯りを灯そうという内容です。かつてエジソンは,京都の竹(竹炭)を使って灯りを点けました。この実験でも竹炭を使ってできればよかったのですが,少々技術的な問題もあり,竹炭に似た(?)ペンシルの芯を使うことにしました。用意するものは,ペンシルの芯(2B辺りが良い),単一乾電池6本,コップ,電線2本,クリップ2個です。コップの上部にクリップを2個,相対する向きにテープでとめます。この時,クリップの半分位がコップの上部から突き出すようにします。ペンシルの芯でこの2個のクリップの橋渡しをします。乾電池を6個直列につなぎ,電線で電池とクリップをつなぎます。すると,ペンシルの芯は発熱し光を発します。体育館の明かりを少し暗くして,皆で小さな輪を作り,その中で実験をしました。灯りが点いているのは30秒足らずですが,子供達の心の琴線に触れることのできた実験だったようです。

 

 寝ろ!と言ってもそう簡単に寝れるものではないようで,その後も少し落ち着かない様子でしたが,いつしか,皆深い眠りについていました。

更に夜が更けても,父ちゃん,母ちゃんは眠りません。保護者の親睦を深めるという趣旨で「サロン・ド・パパ」なる懇親会を開いていたのですが,飲むは飲むは。明け方近くまで,父ちゃん,母ちゃん達の奇声が,ビールの泡と共に上杉の夜空に舞い上がっていました。

 

翌朝630分までには全員起きて,校庭でラジオ体操をしました。朝食は,校庭で災害救助用の五目御飯を食べました。「具材を混ぜて,お湯かけて」で出来る物ですが,これが結構おいしくて好評でした。残ったご飯をお土産に持って帰る子供のいたほどです。そもそも,災害時に拠出される食料ですが,災害時訓練の意味を込めて朝食として出すことにしたものです。

 

食後に,「ろくもんす」というゲームをやりました。三角ベースと言った方が理解しやすいかもしれません。ボールは軟式テニス用のボール,バットは自分の手です。父ちゃん対子供,子供を2チームに分けてと試合をしました。最初は,少し趣の違うゲームに戸惑いを見せてた子供達でしたが,いつの間にか,ゲームに没頭していったようです。

 

ゲームも終わり,いよいよ閉校の時を迎えます。宮沢上杉チャンネット代表の閉校の挨拶,阿部教頭先生の挨拶で,今年のGAKKOUへ泊まろうは終了しました。2日足らずの短い時間でしたが,何時までも語り継がれる思い出であれと祈念したいものです。