2013年3月2日(ブラジル時間、日本との時差12時間)、ブラジル、ガラパリへ環境放射能調査へ行きました。
ガラパリはブラジルの東海岸沿いにあり、そこは自然の放射線量が高いところとして知られています。海岸は特に線量率が高いそうです。現状を確認するために、日本から見て地球の反対側にあるブラジルでの測定を行いました。
GoogleMapsの地図中ではグァラパリ(Guarapari)と表記されています。下の地図中左上の+?ボタンでズームして周辺をご覧ください。
リオデジャネイロからガラパリの北にあるビトリア(VITORIA)までTAMブラジル航空で約70分、ビトリア空港から高速道路を約1時間走って到着します。
関心のある海岸は右から出ている半島中央部の写真奥側
藤波ら(保健物理, 34(3), 253-267(1999))の測定によれば、海岸で測定した地点のうち最も高い線量率はおよそ6μGy/h程度(高さ1m、表面では15μSv/h)と報告されています。その地点近辺を目標とし、空港からはバンをオーダーし測定地点を回ります。(この測定では、Gy(グレイ)とSv(シーベルト)はほとんど同じ単位と考えて差し支えありません。)
(撮影はガラパリ海岸)
ガラパリの砂浜(Areia Preta海岸)は普通の砂浜と同じように見えます。手には線量計(堀場製作所、Radi PA-1000)を持ち、高線量地点を探します。
3月頭ですから日本でいえば9月の頭相当、人もまばらです(写真右)
線量率が2μSv/hを超える地点が見つかりました。そこの砂を採取します。
時定数が長いため撮影時点では同じ線量率にはなっていませんが、最終的には同程度を示します。
パラソルを開いて休んでいる人たちのいるそばで、さらに高線量のところが有りました。写真から分かるように、黒い砂があるところで線量が高くなっています。現地ではこの砂は健康によいと信じられているそうで砂をかけて横になっている人も多いそうです(藤波ら、1999)。また、この調査中も海水浴客に「ここの人たちは放射線があるから長寿なんだ」と話しかけられました。
海岸の近くにはRadium Hotel(ラジウムホテル)がありました。放射性物質であるラジウムの名前をつけられたこのホテルは、もとは1947年にたてられた海軍学校だったそうです。1953年に使われなくなった後カジノ付きホテルになり、1964年にカジノが禁止になった後は放置されています。現在営業していません。海軍学校だったので、この建物は上空から見ると錨の形になるようにつくられています。ラジウムは日本でもラジウム温泉としてがん治療など体によい効能があるものと考える人もいます。また、台北の北投にもラジウム温泉があり、台湾三大温泉の一つとして数えられています。
ラジウム以外にも放射性物質の名前を冠した、Nevada Thorium Hotel(ネバダトリウムホテル)というのが有ります。トリウムは核燃料として使われています。こちらは現在も営業しているようです。
文献(藤波ら、1999)に示された測定地点を廻ります。次は郵便局の前、ここでは0.42μSv/hでした。0.94μSv/hと報告されていましたので、今回の測定値は少し低い値です。
ガラパリはモナズ砂上の町でその砂に含まれるアクチニウム228、鉛212およびタリウム208、鉛214およびビスマス214が含まれています(藤波ら)。これらの放射性物質はウランやトリウムからラジウムなどを経て生成します。藤波らが測定した1998年に比べて2013年には都市化が進行したようで、海岸以外では砂の露出が減少し線量率が低下していると考えられました。それでもガラパリ市街地の測定した地点ではなお0.1?0.4μSv/hの線量率でした。ホテルの名前に放射性物質の名前をつけることや海水浴客の行動などから、放射線量が高いことは現地では好意的に受け止められているようだと感じられました。
ガラパリでの線量調査行では通訳兼案内役を加藤泰三氏に依頼しました。
なお、リオデジャネイロ空港ターミナルビル屋内の線量率は0.22μSv/hでした。