パイロクロア型酸化物A2Re2O7における極性金属状態

パイロクロア型酸化物A2Re2O7における極性金属状態

 パイロクロア型レニウム化合物は、金属伝導性を有すると共に、反転対称性の破れを伴う構造相転移を示す(図1)。伝導電子の遮蔽効果により誘電分極は秩序変数にならないにも関わらず高い転移温度を示すこと、またnoncentrosymmetric相において波動関数のパリティー混成に起因する新奇な輸送現象が期待されることから注目を集めている。

図1: パイロクロア型レニウム化合物の電子相図

 我々は系統的研究を通して、構造相転移がA-X’結合の共有結合性に支配されることを明らかにした。これは、ペロブスカイト型チタン酸化物などの強誘電秩序が共有結合性により安定化されるという従来から知られていた学理が、金属における反転対称性の破れにも適用可能であることを意味している。さらに、noncentrosymmetric相近傍において温度に依存しない電気抵抗という新奇な現象を見出し、その微視的起源として特異な電子格子結合を提案している。


<参照文献>

  1. “Structural and electronic properties of pyrochlore-type A2Re2O7 (A= Ca, Cd, and Pb)” 
    Kenya Ohgushi, Jun-ichi Yamaura, Masaki Ichihara, Yoko Kiuchi, Takashi Tayama, Toshiro Sakakibara, Hirotada Gotou, Takehiko Yagi, and Yutaka Ueda, Phys. Rev. B 83, 125103 (2011).