異方的異常ホール効果と位相幾何学的異常

異方的異常ホール効果と位相幾何学的異常

 スピン軌道相互作用が存在する場合、結晶の点群とスピンの回転対称性が結合するため、スピンは異方的に振舞う。典型例として、強磁性体における磁気異方性が挙げられる。磁気輸送現象に現れる異方性としては、異方的磁気抵抗効果が知られている。我々は同種の異方性が、異常ホール効果にも現れることを明らかにした(図1(上))。
 観測結果は、Rashba相互作用(D-M相互作用)を取り込んだ強束縛モデルの範疇で理解することができる(図1(下))。この結果、磁性体の輸送現象におけるトポロジカルな側面が詳らかとなった。なお、本模型は、Haldaneがパリティーアノマリーを議論した蜂の巣格子モデルの、3次元への自然な拡張となっている。

図1: (上) AgをドープしたFeCr2S4における異常ホール効果の磁場方位依存性。正弦波からのずれが、明瞭に見られる。(下) Rashba相互作用を取り込んだモデル計算の結果。実験と良い一致が見られる。


<参照文献>

  1. “Anisotropic anomalous Hall effect of topological origin in carrier-doped FeCr2S4“K. Ohgushi, S. Miyasaka, and Y. Tokura, J. Phys. Soc. Jpn. 75, 013710 (2006).