研究内容
研究の概要
私達は特に光子場を反応場とする新しい化学反応領域の開拓にむけた先端的研究に取り組んでいます。これまでに、２１世紀の化学に於ける未踏化学研究のひとつ、「化学反応の量子制御」研究の発展に理論的な観点から貢献してきました。この量子制御は、光（レーザー）を用いて反応系の量子状態を直接操作して、目的とする生成物のみを得ようとする新しい方法です。
分子の内部量子状態（分子内電子運動・分子振動・分子回転）に着目して、化学反応の量子制御法の確立に取り組んでいます。具体的には、分子の電子スピン、整列・配向、解離反応などの化学的・物理的に興味深い現象の光制御を扱っています。高出力パルス光照射下における原子・分子のフェムト秒からアト秒の極超短時間でおこる電子ダイナミクスの解明もすすめています。また、これまでの成果をもとに、フラーレンや DNA に代表されるナノ・バイオ分子の反応ダイナミクスの研究へ発展させています。
私達は反応の量子制御研究の日本における拠点として、日本の実験・理論研究グループとばかりでなく、世界（アメリカ、カナダ、ドイツ、オーストリア、台湾、インド）の研究グループと国際共同研究およびセミナーを積極的にすすめています。
研究テーマ
化学反応の量子制御
- 分子整列・配向の制御
- 分子整列制御の最適化と時間分解X線回折像シミュレーション
- 電子スピン状態の制御
- 相対論効果を考慮した電子スピンの最適制御
- 光解離反応の制御
- 非共鳴動的シュタルク効果による選択的光解離の最適制御
超高速電子・核ダイナミクス
- レーザー誘起イオン化の多電子動力学理論
- 強レーザー場誘起多電子ダイナミクスの分子軌道解析
- レーザー誘起非断熱ダイナミクス
- 分子のコヒーレント振電励起に対する偏光効果
- 多自由度系の量子波束ダイナミクス
- ガウス基底を用いた電子・核波束動力学法：位相空間表示に基づく自動基底生成
- 高出力 X 線が駆動する分子ダイナミクス
- 高強度 X 線自由電子レーザー場中の分子の崩壊過程の計算
ナノ・バイオ分子のダイナミクス
- 分子デバイスの理論設計・性能評価
- 分子ジャイロスコープの回転機構の解明および制御
- 生体系の反応ダイナミクス
- 放射線損傷によるDNA鎖切断のシミュレーション
- ナノカーボンの振動・解離ダイナミクス
- 分子ベアリング会合体の内部回転経路探索と動力学シミュレーション
共同研究
- 国内
- 東北大学理学研究科化学専攻 / 美齊津研
- 城西大学理学部化学科 / 見附研
- 東京大学理学系研究科化学専攻 / 山内研
- 東京大学理学系研究科化学専攻 / 磯部研
- 首都大学東京都市環境科学研究科分子応用化学域 / 瀬高研
- 分子科学研究所光分子科学研究領域 / 大森研
- 中部大学工学部共通教育科 / 田中研
- 京都大学理学研究科化学専攻 / 鈴木研
- 奈良女子大学理学部物理科学科 / 上江洌・戸田・狐崎グループ
- 大阪府立大学理学系研究科分子科学専攻 / 小関研
- 海外
- National Chiao-Tung University (Taiwan) / S. H. Lin
- Manipal Academy of Higher Education (India) / D. Mathur
- University of Vienna (Austria) / L. González
- Technische Universität München (Germany) / W. Domcke
- University of Potsdam (Germany) / P. Saalfrank
- Freie Universität Berlin (Germany) / J. Manz
- Universität Bielefeld (Germany) / F. H. M. Faisal
- Université de Liège (Belgium) / F. Remacle
- Princeton University (U.S.) / H. A. Rabitz
- Université de Sherbrook (Canada) / A. D. Bandrauk
