研究内容

次世代基幹エネルギー源の扉を拓く耐極限環境材料

高温の溶鉱炉、低温の南極、真空と放射線の宇宙空間、高圧の海底・・・、これらは生身の人間では耐えられない極限の環境です。人類は、極限環境と人間が活動できる環境を隔てる防壁となる新たな材料、すなわち「耐極限環境材料」を創り出し、これらの環境を探索したり利用したりすることを可能としてきました。極限環境は、まさに人類のフロンティアであり、耐極限環境材料の発明が人類文明の発展を牽引してきたと言っても過言ではないでしょう。

今を生きる人類のフロンティアのひとつとして、新たなエネルギー源の開発が挙げられます。これまでに様々な未利用のエネルギー源が提唱されていますが、中でも「核融合炉」は長期間にわたって人類文明を支える基幹エネルギー源として期待されています。しかし、核融合炉は高温・高圧・放射線が重なりあう複合的な極限環境を有することが、その実現に立ちふさがる障壁となっています。当研究室では、核融合炉の実現のカギとなる耐極限環境材料の研究開発を進めています。


核融合炉 ~その極限環境に耐える材料の研究開発~

現在、核融合炉の開発は基礎研究段階からの大きな飛躍の時を迎えています。日本、欧州連合、ロシア、中国、米国、韓国、中国、インドの7極の国際協力によって、実験炉ITER(イーター)の建設が進んでいるのです(図1)。ITERの目標は、超高温のプラズマ状態の燃料を磁場によって閉じ込めて核融合反応を持続させることで、投入した以上のエネルギーを取り出すことを目指しています。この時、核融合炉の真空容器内では、プラズマの温度は1億℃にも達します。その一方で、真空容器の外側では、強力な磁場を発生させる超伝導磁石を絶対零度近くまで冷却し1ています。

また、ITERに続く発電実証炉の段階になると、核融合反応から生成する多量の高エネルギー中性子等の照射による炉内材料の損傷あるいは損耗が問題となります。加えて、発電のために必要となる熱エネルギーの取り出しのために、高温にさらされる壁材料は高温・高圧の冷却材と接することによる腐食も問題となります。これらの複合的な極限環境を克服するために、耐極限環境材料の研究開発が重要となるのです。

ITER

 

図1 フランスで建設中のITER(ITER機構ホームページより)


笠田研究室のアプローチ① ~耐極限環境材料をつくる~

当研究室は、複合極限環境を有する核融合炉に用いられる材料として、特に、高温と放射線に対する優れた耐極限環境性能を示す「ナノ酸化物粒子分散強化合金」の研究開発を進めています。この合金は、金属マトリックス中にナノサイズの酸化物粒子を高密度に分散させた組織を形成することによって優れた特性を発現します。しかし、このような組織を得るためには、通常の金属材料の製造法である溶解法を適用することができません。

我々は、金属等の粉末を機械的に混合するメカニカルアロイング法を用いることによって、ナノ酸化物粒子を高密度に分散させるための組織制御に成功しています。粉末に微量成分を加えて混ぜて捏ねて、焼き固めるプロセスは、ソーセージを作る工程と似ているところがあります(図2)。あなたの考えた新しいレシピによって、笠田教授のこだわりのレシピで作られた合金を凌駕する新しい耐極限環境材料を創りだせるかもしれません。

Mechanical Alloying

 

図2 メカニカルアロイングによるナノ酸化物分散粒子強化合金の製造工程の例


笠田研究室のアプローチ② ~耐極限環境材料を評価する~

さて、料理はキッチンで作られた後に、食卓で賞味されることによって完成します。実験室でつくられた材料も、求められる特性を実験室や実環境で評価される必要があります。当研究室では、自ら創り出した材料の強度特性や熱伝導特性等を最先端の装置群によって評価することが可能です。また、極限環境に置かれた金属材料の強度特性をナノメートルからマイクロメートルの微小なスケールで調べるために、ナノインデンテーション装置を駆使した新しい評価法の開発も進めています。

材料の特性や劣化の要因となっている元素の機能や材料組織を解明することも重要です。例えば、電子状態と材料組織の同時分析を行うことを可能とした高分解能軟エックス線分光装置を備えた電子顕微鏡によって、福島第一原子力発電所におけるデブリの状態予測に貢献する基盤的な知見も得られています。

また、宇宙空間の厳しい放射線環境で用いられる太陽電池の耐照射性評価に関する研究も行われています。更に、太陽電池を用いた放射線量測定法の開発にも展開されています。

これらの研究を通して、核融合炉のみならず、原子力プラントの安全性にも貢献可能な材料工学基盤の構築を進めています。

debris

 

図3 福島第一原子力発電所におけるデブリの状態予測に貢献する材料研究

図4 宇宙用太陽電池措置の放射線損傷による劣化メカニズムの解明と耐照射性センサーの開発

 


外部資金獲得状況

  • 科学研究費補助金
    • 基盤研究(A)「 ダイバータ用耐照射性銅合金の創製」(分担:笠田竜太教授)2016-2019年度
    • 若手研究(A)「炭化ケイ素の照射欠陥-高温水腐食相関解明とその防食の実証」(代表:近藤創介准教授)2017-2019年度
    • 研究活動スタート支援「Irradiation effects on the performance of the alumina scale formed in FeCrAl ODS ferritic steels」(代表:YU Hao助教)2019年度
    • 基盤研究(B)「 超微小試験技術による照射脆化のミッシングリンク解明」(代表:笠田竜太教授)2019-2021年度
    • 若手研究「高耐放射線性CIS太陽電池を応用した原子力電池設計手法の開発」(代表:奥野泰希助教)2020-2022年度
    • 基盤研究(B)「 粒子線照射したタングステンの水素添加による機械的特性変化の評価とメカニズム解明
      研究課題」(分担:笠田竜太教授)2021-2023年度」
  • 原子力システム研究開発事業
    • 令和2年度新発想型「次世代フルセラミックス炉心設計を見据えた多重防食技術の基礎基盤研究」(代表:近藤創介准教授)2020-2021年度
    • 令和2年度新発想型「原子炉中性子リアルタイムモニタリングのための太陽電池型線量計の開発」(分担:奥野泰希助教)2020-2021年度
  • 英知を結集した原子力科学技術・人材育成推進事業
    • 平成30年度共通基盤型原子力研究プログラム一般課題「過酷炉心放射線環境における線量測定装置の開発」(分担:奥野泰希助教)2018-2020年度
  • JST共創の場形成支援プログラム
    • 令和2年度育成型「革新的精製技術が駆動する有限鉱物資源循環システム共創拠点」(分担:笠田竜太教授)
  • NIFS原型炉研究開発共同研究
    • 令和3年度課題指定型「酸化物分散強化銅合金の大型化に関するフィージビリティ研究」(代表:余浩助教)
  • 企業との共同研究
    • (省略)
  • その他

    • 日本金属学会第2回フロンティア研究助成「変形誘起ナノ双晶と酸化物散強化を利用した高延性高強度アルミナフォーミングCoNiCrAl合金の創製」(代表:余浩助教)

片平キャンパスの金属材料研究所までお越しください

当研究室に配属された大学院生は、片平キャンパスの金属材料研究所で研究生活を送ることになります。得られた研究成果を国内学会や国際会議において発表することが推奨されます。また、耐極限環境材料に関する研究活動に加えて、幅広いエネルギーに関する理解を深めた上で原子力や核融合炉等の量子エネルギー開発の位置付けや社会への発信方法について学ぶことも期待されます。

2017年10月に始まった比較的新しい研究室ですが、所属学生は学会における受賞など、数々の活躍を見せ始めています。

笠田教授は量子サイエンスコース、量子エネルギー工学専攻の出身でもありますので、様々な業界で活躍する先輩達とのネットワークも豊富です。見学は随時受け付けていますので、是非足を運んでください。

学生が輝いている当研究室を飛躍させる第5期生を笠田研は募集しています!