2019/11/08-2020/02/06
自然科学短期共同研究留学生派遣プログラム




こんにちは。D1の早坂遼一路です。2019年11月から2020年2月まで、カールスルーエ工科大学(KIT)に留学してました。
KITでは、REBCO超伝導体の成膜技術の一つである、Chemical Solution Deposition (CSD)というプロセスの研究を行いました。



簡単に説明すると、CSDでは青い溶液(下の写真)を基盤の上に垂らし…



約800℃まで加熱することで、REBCO膜を得ることができます。



高真空装置が必要ないため、REBCO線材製造のコスト削減が期待できる手法です。

研究の目的はREBCO膜の臨界電流密度を向上することです。そのためには、加熱温度、圧力、湿度など、多くのパラメータ(要因)を調べる必要があります。

このような実験を行うとき、一つの要因Aだけを変え、その他の要因(B,C,D,...)は固定して実験をするというのがよくあるアプローチです(逐次実験)。橋爪研でもKITでもそうやってます。しかし、逐次実験で要因Aの最適値を見つけたとしても、固定したその他の要因の値が変化すれば、Aの最適値は同じでない場合がほとんどです。それどころか、特性にとってAの作用がプラスかマイナスかといった全体の挙動さえ、その他の要因によって変化する場合(交互作用)があります。

したがって、多くの要因が絡み合うような場合、どの要因が重要で、交互作用があるかどうかなどは逐次実験では分かりません。全ての要因の組み合わせを実験できれば良いのですが、それも時間やコストの面で現実的ではありません。

そこで、本研究ではDefinitive Screening Design(DSD)という実験計画法の一つを採用することにしました。DSDを使うことで6要因3水準(低・中・大)の実験を14回の試行で行うことができました。

6要因3水準の実験の全組合せが3^6=729通りであることを考えると、わずか14回の試行で重要な要因を特定し、最適化できたことは驚きでした(理論は勉強したのですが、うまく行くかどうかは半信半疑だったので)。



約800℃まで加熱することで、REBCO膜を得ることができます。

また、KITではREBCO線材の長尺化も行われていて、その研究では数mの線材を作製するのには一週間くらいかかります。それで今回導入したDSDという手法が非常に効率的なため、今後のKITの研究でも活用してもらうことになりました。

DSDには多くの統計学的手法が必要でした。私にとって統計学を本格的に使って研究をするのは初めてで、大変貴重な経験となりました。


研究だけでなく、ドイツでは充実した生活を送ることができました。厳選した写真をお見せします↓



休日は、鉄道で南ドイツを周りました。



車窓からの景色が、鉄道の旅の醍醐味でした。



シンデレラ城のモデルであるノイシュバンシュタイン城へ行ったり、




ガーミッシュ・パーテンキルヒェンという場所で、ハイキングをしました。



ニュルンベルク、街全体に広がる橙色の屋根がとても綺麗でした。



住んでいたカールスルーエの近くには、木組みの家々が並ぶストラスブール(フランス)や、



ライン川沿いにあるハイデルベルクなど、綺麗な場所がたくさんありました。



住んでいた大学寮はカールスルーエ城の裏の方へ1分ほど歩いた所にありました。

ドイツに行く前は、帰りたくなくなるとは思いもしませんでしたが、名残惜しい気持ちで一杯です。
いつかまた機会があれば夏のドイツに行きたいと思います。

以上


文責:早坂(D1)
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